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いまどきの都会人が夢想する「良き田舎」と、現実の「狂った田舎」との二重性が、浮き彫りになります。
この映画は作る側にも観る側にもメルクマールになります。今後、地方を舞台にした批評的映画は、『国道20号線』とどう距離をとるのかを問われることになるでしょうね。
僕の今年のベストワンは『国道20号線』です。こんな才能が出てくるのは素晴らしいです。(「映画芸術」本文より抜粋)
宮台真司
(社会学者)
奇跡としか言いようのないシーンがある。
パチンコ店や消費者金融が立ち並ぶ国道沿いの夕方の駐車場でチンピラ風の青年が携帯電話で話している。
過剰な程に映画的要素が溢れ思わず鳥肌がたつであろうこのシーンを観ずして、今年の日本映画を語ることはできない。
柳町光男
(映画監督『カミュなんて知らない』『ゴッド・スピード・ユー!/BLACK EMPEROR』ほか)
愚者・チンピラ。ここに描かれるチンピラたちは、いったい何のために、また、何がしたくて生きているのか?をまず私は思った。しかし、分からない。多分、それは分からなくてもいいことだと思った。
なぜならこの手の愚者・チンピラたちは、そういうことを思って生きていないからだ。仮にそう思って生きていたとしても希薄だから、感じられるはずがないのだ。
所詮、愚者は愚者。チンピラはチンピラとして描く、その富田監督の想いや視点を感じたとき、この映画の持つ“つらさ”が伝わってきた。
松井良彦
(映画監督『
追悼のざわめき』
『錆びた缶空』ほか)
国道20号線はどこへ続く道かはわからないけれど、そこを横切るだけの季節が映しとられていました。
俺はあんたの映画が好きだ。
矢崎仁司
(映画監督『三月のライオン』
『ストロベリーショートケイクス』
ほか)
富田君は『雲の上』という怪物的な傑作を生み出した作家なので、どんな粘り腰の演出をするのだろうかと興味津々で、この映画のあるシーンに参加したのだが、あまりの潔さに仰け反ってしまった。しかしそれは彼の明晰さの証であり、だからこそ『国道20号線』を才気走らせているのだろうと今は思う。
七里圭
(映画監督
『眠り姫』
『ホッテントットエプロン-スケッチ』
ほか)
明るい出来事なんか何一つ描かれていないのに、見終わって渋谷の街を歩きながら、なんだか元気でした。
狗飼恭子
(小説家『温室栽愛』『低温火傷』ほか)
十年前に作った『百年の絶唱』に腹違いの兄弟がいると教えてくれたのは、映画監督の篠崎誠だった。二、三年前のことだ。そいつの名前は『雲の上』というらしかった。以来、私はそいつの顔を見てみたいと思いつづけてきたが、なかなかその機会はなかった。
そして、今年の七月、ポレポレ東中野で行われた『ラザロ』と『百年の絶唱』のオールナイト上映に、突然、富田克也は仲間たちと連れ立ってやって来た。
作り手同士は作品を通じてしか出会うことは出来ない、と私は思っているが、不思議なことに富田と会った瞬間、そういうこととは別の次元のつながりのようなものを感じた。
つまり、こいつが作った映画には、自分の映画と同じ血が流れていても不思議ではないような気がしたのだ。そんな経験は滅多にあるもんじゃない。
そして、『雲の上』と『国道20号線』を観せてもらった。
『雲の上』には、長い時間をかけて作られた映画しか持つことの出来ない独特のうねりがあった。シーンとシーン、カットとカットが計算を超えてぶつかり合い、大きなうねりを作り出しているのだ。顔は暗くて分からないが、犬を散歩させる明らかに本物のやくざ風の男たち、川の流れに洗われる犬の死体……時折フィルムに写りこむそれらの信じられない被写体に、私の目は射抜かれた。極端なリアリズム志向と空想性の共存、こことは違うどこかに憧れながらも結局は惨めに現状を受け入れるしかない登場人物たち、確かに『雲の上』と『百年の絶唱』にはどこか同じ血が流れているのかもしれない。
『国道20号線』は、現在の地方都市の問題を的確に捉えている。私が『ラザロ』―特に「朝日のあたる家」―で対象とした問題に別の角度からアプローチしているのだ。グローバル経済は、国道やバイパス沿いに郊外型の大型店の隆盛をもたらし、地域にもともと存在した商店街や共同体を破壊する。私は、破壊された場所を映画の舞台に選んだが、富田は郊外のショッピングモールや消費者金融を舞台に選び、そこに居場所を見出すしかない不良たちの切ない姿を描き出す。
『国道20号線』と『ラザロ』は、この罪深い世界が生み落とした兄弟のようだ。
井土紀州
(映画監督『百年の絶唱』
『ラザロ』
ほか)
かつて北野武に「俺たちまだ始まってもねえよ」という名台詞があったが、あれは思えば希望的だった。
それから十余年。映画のようには幕を下ろせなかった人生がここに存在している。
すでに全てが上滑り、会話やいざこざ、戯れ、何もかもが、全て肉体や実感を失って、遠い過去の回顧録のようだ。
一体いつ、我々は終わってしまっていたんだろう。
一体何がここまで隔絶させるのだろう。
寄り添う者同士さえ、見ている風景が違う。
闇に浮かぶドンキ・ホーテ。ただその揚々とした明るさが、目にしみる。
西川美和
(映画監督
『ゆれる』
『蛇イチゴ』
ほか)
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